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2011.9.18-

Web版 DAISYプレイヤー & DAISY風 テキストリーダー
(在宅吃音訓練システムはこちら)

小山智史

 マルチメディアDAISY図書・テキストDAISY図書・DAISY録音図書をWebブラウザで利用できます。また、テキストファイルをDAISY風に表示する(読み上げる)リーダーとしても利用できます。

QUICK START

 「サンプルページ」を表示し、ページ上部のを押すと、表示内容が合成音声で読み上げられます。読み上げ中の箇所はハイライト表示されます。


図0.1 サンプルページ

(1) 表示されているテキストは...サーバ上にあるテキストファイル(readme.txt)です。ページ上部のを押すと設定画面が現れ、[テキスト欄]で内容を確認できます。設定画面では[背景色]や[強調色]や[縦書き/横書き]などを変更できます。

(2) テキストの追加...を押して一旦[テキスト欄]を空にし、何かテキストを入力します(1行目はタイトルになります)。コピー&ペーストで貼りつけたりでテキストファイルを読み込むこともできます。そしてを押すと、そのテキストが追加され、このテキストと同じように表示・読み上げができるようになります。

(3) 表示中のテキストの修正...[テキスト欄]のテキストを修正し、を押します。サーバにあるテキストを修正したい場合は[テキスト欄]のテキストを修正し、で追加登録します。

(4) 表示中のテキストの削除...(2)で追加したテキストを削除したい場合は、で[テキスト欄]を空にし、を押します。


[PART1] Web版 DAISYプレイヤー

 サーバ上のDAISY図書を共同利用する仕組みです。既存のDAISYコンテンツを利用する場合は、著作権の問題に注意する必要があります。

 マルチメディアDAISY図書DAISY録音図書テキストDAISY図書をWeb上で直接利用することができ、「広報を多くの人にわかりやすく公表する」など広く活用できます。

1. 基本操作

 図1.1はマルチメディアDAISY図書「ごんぎつね」をブラウザで表示した様子です。パソコンの場合はF11キーを押してキオスクモード(全画面モード)で使うといいかもしれません。


図1.1 マルチメディアDAISY図書の表示画面

 基本操作はページ上部で行います。

表1.1 基本操作
ページ(章)選択
(ごん狐 2 3 ... )
図1の例では、 「ごん狐」 はタイトル(テキストの先頭)、2 は2ページ目(第2章)に相当します。ここで選んだ内容が画面に表示されます(図1は第2章)。
このボタンを押すと表示中の内容が録音音声で読み上げられ、読み上げ箇所がハイライト表示されます。で読み上げが停止します。
なしフレーズ読, ページ読, 通読 から選択します。 フレーズ読 はマウスでポイントした箇所を読み上げます。 ページ読 はページ(章)(図の例では 「か」行 )の終わりまで読んだら読み上げを停止します。 通読 はページ(章)の終わりまで読んだら次のページ(章)を表示し読み続けます。
表示色や読み上げ音声の設定などを行います。詳しくは次章。

2. 設定操作

 ページ上部のを押すと、設定画面が現れます(図1.2)。


図1.2 設定画面

 設定操作は表1.2のように行います。

表2 設定操作
背景画面全体の背景色を指定します。
強調ハイライト箇所の背景色を指定します。
縦横縦書き/横書きを指定します。

3. コンテンツの作り方

  1. template.zipを保存し、解凍した後、DAISYコンテンツと同じフォルダに入れます。
  2. ncc.wsf をダブルクリックするとコンテンツに応じて ncc.js というファイルが作られます。この操作で次のことが行われます。

4. いくつかの例

(1) マルチメディアDAISYの例

(2) DAISY録音図書の例

 DAISY規格はもともとCDを用いた視覚障害者用のDAISY録音図書からスタートしました。それまでカセットテープに録音されていた録音図書は、DAISY録音図書に置き換わり、広く利用されています。自治体の広報などのDAISY録音図書は、Webで公開されたり、必要な方にCDが貸し出されたりしています。

(3) テキストDAISYの例

 テキストDAISYは、PART2のテキストリーダーと同様に、合成音声で読み上げを行います。操作方法も同様です。


[PART2] DAISY風 テキストリーダー

 Web上またはパソコン上のテキストファイルや青空文庫[2]の図書を、合成音声で「DAISY風に」読むことができます。

 ヘッダーに表示された「目次」の中の章や節に相当する項目を選ぶと、そのコンテンツが表示されます。コンテンツは、ハイライト表示しながら合成音声で読み上げられます。

1. 基本操作

 図2.1は訓練用ページをブラウザで表示した様子です。パソコンの場合はF11キーを押してキオスクモード(全画面モード)で使うといいかもしれません。


図2.1 ブラウザの表示画面

 基本操作はページ上部で行います。

表2.1 基本操作
訓練用テキスト(ファイル)を選択します。 「あ」行 「か」行 ... がそれぞれのテキストファイルに対応しています。予めサーバに用意されたテキストの他、新規にテキストを追加することができます。
ページ(章)選択
(「か」行 1「か」文 ... )
図1の例では、 「か」行 はタイトル(テキストの先頭)、1.「か」文 は1ページ目(第1章)に相当します。いずれかを選ぶと、その内容が画面に表示されます(図1は「か」文)。
このボタンを押すと表示中の内容が合成音声で読み上げられ、読み上げ箇所がハイライト表示されます。で読み上げが停止します。
なしフレーズ読, ページ読, 通読 から選択します。 フレーズ読 はマウスでポイントした箇所を読み上げます。 ページ読 はページ(章)(図の例では 「か」行 )の終わりまで読んだら読み上げを停止します。 通読「か」行 が終わると 「き」行 というように、次のページ(章)を表示し読み続けます。
表示色や読み上げ音声の設定などを行います。詳しくは次章。

2. 設定操作

 ページ上部のを押すと、設定画面が現れます(図2.2)。


図2.2 設定画面

 設定操作は表2.2のように行います。

表2.2 設定操作
背景画面全体の背景色を指定します。
強調ハイライト箇所の背景色を指定します。
縦横縦書き/横書きを指定します。
テキスト欄



[テキスト欄]には現在表示中のテキストの「元データ」が表示されているので、ここで、内容や読み誤りを修正したり、新規テキストを入力したりできます。
を押すと[テキスト欄]がクリアされます。
を押すとパソコン上のテキストファイルを[テキスト欄]に読み込むことができます。
を押すと[テキスト欄]の内容が保存され表示に反映されます。
を押すと[テキスト欄]の内容がローカルテキストとして新規保存されます。
 以下は典型的な操作です。
(1) 新たにテキストを入力して追加登録したい場合は、→[テキスト欄]にテキスト入力→とします。
(2) パソコン上のファイルを追加登録したい場合は、とします。
(3) スマホの場合は、追加登録したいファイルをパソコンからスマホにメール添付で送り、スマホでこれを保存します。Gmailアプリの場合、Androidスマホでは「Download/email」、iPHONEでは「このiPHONE内」に保存されるようなので、これをで追加登録します。
(4) 読みの修正など、テキストの一部を変更したい場合は、[テキスト欄]の修正→とします。サーバテキストを修正したい場合は [テキスト欄]の修正→で修正したテキストを追加登録します。
(5) 追加登録したテキストはブラウザに保存され、「同じパソコンやスマホの同じブラウザで利用する限り」ずっと使い続けることができます。
(6) 追加登録されているローカルテキストを削除したい場合は、とします。
通常はテキストを「標準話者」の声で読み上げます。テキスト冒頭に「話者:太郎,花子」のように記載しておくと、「標準話者」の他に「太郎」「花子」を選択できるようになり、それぞれの話者について、速さ音程を設定できます。テキスト中で部分的に声を変えることができます。
話者ごとに読み上げ音声を選択します。利用できる音声はブラウザによって異なります(表2.3)。声の質だけでなく、読み誤りやイントネーションも異なるので、注意が必要です。
速さ話者ごとに読み上げ速度を設定します。
音程話者ごとに音程(ピッチ)を設定します。
減衰「減衰読み」の減衰量を時定数で指定します(吃音訓練の時に使います)。

表2.3 利用できる音声
OSブラウザ日本語音声 英語音声
WindowsEdge Ayumi
Haruka
Ichiro
Chrome Haruka
日本語
Zira
US
UK female
UK male
FirefoxHaruka Zira
Android Chrome 日本語 日本 英語 イギリス
英語 アメリカ合衆国
iOS Safari Hattori
Kyoko
Aaron
Fred
Nicky
Samantha
O-ren
Alex

 以上の設定内容はブラウザに保存され、次回継続して利用できます。

3. コンテンツの作り方

 図2.3は「か行」(ka.txt)の内容を示したもので、テキストエディタで作成できます。作成したテキストファイルをで読み込んで保存しておけば、予めサーバに用意されたテキストと区別なく利用することができます。


図2.3 吃音訓練用テキストの例(「か」行 および 電話練習用)

 テキスト中の見出しの抽出と本文の分割、フレーズの抽出は自動で行われます。フレーズは、「、。」「,.」「,.(英文)」を区切り文字として扱い、ハイライト表示および音読の区切りになっています。

 「減衰読み」の場合はフレーズ中のスペースを区切りとしたセグメント毎に減衰します。ただし、話者指定した箇所には減衰読みは適用されません。これにより、電話応対の練習の際に通話相手の声が減衰することはありません。

 レイアウトの乱れを改善したい場合は、テキストファイルを修正します。読み誤りを修正したい場合は、「☆読み☆よみ☆」のようにテキスト中で読みを指定します。逆に、ひらがなで表示したい際にイントネーションが不自然になってしまう場合は、「☆よみ☆読み☆」のようにすると改善されることがあります。読み方はブラウザによって異なる(表4)ので、注意が必要です。イントネーションやアクセントを明示的に指示することはできません。

 テキスト中では表2.4のルールを利用ができます。

表2.4 テキスト中で利用できるルール
青空文庫
  • 先頭行はタイトル(コメントや空行や右寄せや話者指定を除く)として扱われます。
  • 冒頭に記載されている「----...」に挟まれている「注記」は表示しません。
  • 末尾に記載されている「底本:...」以降は表示しません。
  • [#...見出し]は章(ページ)の見出しとなります。
  • [#...]の注記は表示しません。
  • ルビ対象文字列《ルビ文字列》でルビが表示され、ルビで読み上げられます。
XHTML Converter
  • タイトル行頭の「=」は表示しません。
  • 行頭の「*~******」または「■□◆◇●○」は見出し(章・ページ)となります。
  • 「%ファイル名%代替文字列%」で画像(jpg, gif, png)を表示します。
  • 「^URL^文字列^」で文字列にリンクを設定します。
  • 「‘ルビ対象文字列‘ルビ文字列‘」でルビが表示され、ルビで読み上げられます。
独自のルール
  • 「#」から始まる行はコメントとして扱われます。
  • 「一」「1....」「1 ...」などの行は見出し(章・ページ)となります。
  • 読み誤りやイントネーションの修正は、テキストの冒頭または文中で行うことができます。テキスト冒頭に「#表示文字,音声文字」の行を(何行でも)置くと、以後「表示文字」「音声文字」で読み上げられます。また文中で「☆表示文字☆音声文字☆」と記載すると「表示文字」「音声文字」で読み上げられます。かなを漢字表記にすると自然な読み方になることがあります。
  • テキストの冒頭に「#話者:太郎,花子」のように「話者」を定義しておくと、「太郎:おはよう。」の行は「太郎」の声で「花子:こんにちは。」の行は「花子」の声となります。実際の声の設定は設定画面で行います。話者の数は何人でも構いません。
  • 「右寄せ: ...」の行や年月日の行は右寄せ表示します。
  • 「中央: ...」の行はセンタリングします。
  • 「画像:ファイル名」の行は、画像ファイル(jpg, gif, png)を表示します。「,」で区切って複数画像を表示させることができます。横書きの場合は幅、縦書きの場合は高さが、ウィンドウの幅や高さよりも大きい場合は範囲内に収まるように自動調整されます。なお、表示できるのはサーバ上の画像ファイルだけで、パソコン上のローカル画像ファイルは表示できません。
  • ┌─...─┐から└─...─┘までを表として表示します。│をカラム(横)の仕切り線、├...┼...┤を縦の仕切り線とします。
  • 「文字列1▼文字列2▼文字列3...」からなる行は、はじめは「文字列1」だけを表示(読み上げ)します。その後その箇所をクリックすると「文字列1」に続いて「文字列2」が現れ、再びクリックすると更に「文字列3」が現れ、...となります。
  • 「文字列1▽文字列2▽文字列3...」からなる行は、はじめは「文字列1」を表示(読み上げ)します。その後その箇所をクリックすると「文字列1」が「文字列2」に置き換わり、再びクリックすると「文字列3」に置き換わり、...となります。
  • 文中の「☆表示文字☆音声文字☆」「表示文字」「音声文字」で読み上げます。この方法で読み誤りの修正を行うこともできます。ただし、フレーズ内でのみ機能し、表示文字や音声文字の中に「、」「。」を含めることはできません。このことに注意すれば、「図を表示して合成音声で説明する」ような用途でも利用できます。
  • テキスト中に「問題シャフル」があると問題(ページ)がランダムになり、「答えシャフル」があるとページ中の選択肢(▼または▽を含む行)の表示がランダムになります。クイズなどに用います。問題シャフルと答えシャフルは組み合わせて用いることができます。
  • テキスト中に「行シャフル」の文字があると、ページ(章)中の行がシャフルされ、「列シャフル」の文字があると、行の中の並び(区切り文字はスペース)がシャフルされます。行シャフルと列シャフルは組み合わせて用いることができます。

4. いくつかの例

5. マルチメディア教材の例

 合成音声を用いたマルチメディア教材を3例紹介します。

6. Webプレゼンテーション

 本来の目的とは異なりますが、「Webプレゼンテーション」にも利用できます。音声読み上げは「なし」にします。私はプレゼンでPowerPointを使ったことは一度もなく、この方法(その前は普通のWebページ)で行ってきました。

 F11キーを押し、全画面モード(キオスクモード)にします。また、好みの背景色を指定し、CTRL + + / CTRL + - で文字サイズを調整します。

 レジメ印刷は、ヘッダーの末尾の[全表示]で行います。

プレゼン用テキスト プレゼン
図2.13 プレゼン表示の例

7. 在宅吃音訓練

 小山内筆子先生(弘前医療福祉大学)と共同でこのシステムを在宅吃音訓練に利用する研究を行っています。詳しくはこちらのページをご覧ください。

8. Webサーバでの利用

 テキストをWebサーバに置いて利用したい場合は、以下のようにします。
(1) template.zipを保存し、解凍します。
(2) 用意したテキストファイルを同じフォルダに置き、ncc.wsf をダブルクリックします。これにより ncc.js というファイルが作られます(内容はテキストファイルのリスト)。
(3) これら一式をWebサーバに転送します。


(参考資料)

[1] DAISY研究センター, http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/
[2] 青空文庫, http://www.aozora.gr.jp/
[3] XHTML Converter, http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/software/xhtmlconv.html
[4] テキストファイルをDAISY風に表示するリーダーの開発, 電子情報通信学会福祉情報工学研究会資料, WIT2011-89, pp.107-112, 2012.
[5] DAISY 風テキストリーダーの開発, 弘前大学教育学部紀要, 108, pp.163-169, 2012.
[6] Web版DAISYプレーヤー&DAISY風テキストリーダー, 第105回教育・福祉とエレクトロニクス懇話会資料, 2011
[7] 実習: Web版DAISYプレーヤー&DAISY風テキストリーダー, 第106回教育・福祉とエレクトロニクス懇話会資料, 2012


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