伊能忠敬 北への旅立ち  朝から降っていた小雨《こさめ》はやんでいた。空には雲が低く垂れ込めている。江戸・☆千住☆せんじゅ☆の宿場には、旅の装束《しょうぞく》をととのえた伊能忠敬がいた。きっと結んだ口もとは、これからの困難な旅を必ず成功させるという、強い気持ちを☆表して☆あらわして☆いる。後ろには、五人の隊員が緊張した顔でひかえていた。 「どうかご無理をなさらぬように。」 「旅の無事をいのっておりますぞ。」  声をかけてくれる見送りの人たちに、忠敬は深い一礼をした。 (教育出版 小学国語6下 より)