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更新

暑さ指数・CO2モニタリングシステム

小山 智史
佐藤 ゆかり(柴田学園大学短期大学部)
森 菜穂子(青森県藤崎町立明徳中学校)

附属学校園の温熱・空気環境
-熱中症と感染症の予防のために-

(更新履歴)

1. 概要

 熱中症対策の指標として温度や湿度や暑さ指数(WBGT)が用いられます。学校では体育館などに温湿度計が設置され、また、保健室にはハンディタイプの温湿度計や熱中症指数計が用意されています。しかしながら、暑さ指数を掌握するには、校舎内外の要所を定期的に巡回しなければならず、それは実際問題としてなかなか困難です。

 そこで、校舎内外複数箇所に設置した温湿度センサで計測した温度と相対湿度をLAN経由でサーバに記録し、保健室や職員室等のパソコンで温度、相対湿度、WBGT値(近似値)の変化を観測できるようにしたシステムを開発しました(2013年6月)。

 WBGTの推定値は温度と相対湿度から日本生気象学会の指針[2][3]の図1に基づいて算出し、[2][3][4]に基づくコメントを付しました。

 同指針[3]には、「...本指針におけるWBGTは温度と湿度から推定されるものである。室内で測定したWBGTとはよく一致するが、屋外においては...低温域では実測値よりも大きく、高温域では実測値よりも小さくなることが多いので注意が必要である。」とあります。従って、グランドのWBGT値の解釈には注意が必要です。WBGT値の算出方法に関してはさまざまな議論があり[5][6][7][8]、今後の動向が注目されます。

2. ネットワーク対応のモニタリングシステム

(1) システムの概要

(2) センサの主な仕様

センサ 型式 精度
温湿度センサ Sensirion SHT31 温度 ±0.2℃, 湿度 ±2%RH
CO2センサ フィガロ技研 CDM7160 CO2 ±(50ppm+3%)

(3) モニタリング画面

■ 暑さ指数(WBGT)

 グラフエリアは、日常生活の熱中症予防指針(日本生気象学会)、熱中症予防のための運動指針(日本スポーツ協会)を参考に,以下のように色で区分しました。

31℃以上(危険)
28℃以上31℃未満(厳重警戒)
25℃以上28℃未満(警戒)
21℃以上25℃未満(注意)
21℃未満(ほぼ安全)

 折れ線グラフは、場所ごとに色別で表示されます。また、画面右側で表示する教室を選択することができます。

■ 温度

 グラフエリアは、学校環境衛生基準における温度の基準値を参考に、以下のように色で区分しました。

28℃超過
17℃以上28℃以下(基準値の範囲)
17℃未満

 折れ線グラフは、場所ごとに色別で表示されます。また、画面右側で表示する教室を選択することができます。

■ 相対湿度

 グラフエリアは、学校環境衛生基準における相対湿度の基準値を参考に、以下のように色で区分しました。

80% 超過
薄青:30%以上80%以下(基準値)
30% 未満

 折れ線グラフは、場所ごとに色別で表示されます。また、画面右側で表示する教室を選択することができます。

■ CO2濃度

 グラフエリアは学校環境衛生基準を参考に、CO2濃度の基準値1500ppmにラインを引き、空気汚染状況がイメージできるよう超過エリアを茶のグラデーションにしました。

 折れ線グラフは、場所ごとに色別で表示されます。また、画面右側で表示する教室を選択することができます。

■ 一覧表示

 選択された場所の温度・相対湿度・WBGT・CO2濃度が10分毎に更新され、上の行に表示されます。

3. モニタリングセンサ端末設置状況


幼稚園ホール

幼稚園保育室

幼稚園園庭

小学校教室

小学校体育館

体育館のセンサガード

中学校教室

中学校体育館

小・中学校グラウンド

特別支援学校教室

特別支援学校第一体育館

特別支援学校第二体育館

4. インジケータ

 教室に設置されている一部のセンサに暑さ指数とCO2濃度のインジケータ(LED表示)を増設しました。暑さ指数の表示が黄色(警戒域25℃~)になったら要冷房、CO2濃度の表示が赤色(教室の基準超過1500ppm~)になったら要換気です。


5. その他

5.1 ローカルセンサを用いたモニタリングシステム

5.1.1 システムの構成

 パソコンにUSB接続したセンサで測定するようにしたシステムも作ってみました。WebIOの技術を利用しており、次のような特徴があります。


(a) インターネット非接続環境での利用

(b) インターネット接続環境での利用

(c) ブレッドボードで試作した温湿度センサ

(d) 温湿度センサとCO2センサをケースに入れた製作例

5.1.2 温度・湿度・CO2濃度の数値表示

 USB接続したセンサで温度・湿度・CO2濃度を測定し、1秒毎に表示を更新します。

thermometer.html: <!DOCTYPE html><html lang="ja"><head> <meta charset="utf-8"> <title>温湿度計</title> <script src=webio.js></script> </head><body> <!-- ここからWebページの本体とプログラム --> <div id=TEMP style='font-size:80pt'></div> <div id=HUMI style='font-size:80pt'></div> <div id=CO2 style='font-size:70pt'></div> <script> function setup(){ // --- はじめに自動実行 --- pinMode(TEMP,ANALOG_INPUT); // TEMPをアナログ入力に pinMode(HUMI,ANALOG_INPUT); // HUMIをアナログ入力に pinMode(CO2,ANALOG_INPUT); // CO2をアナログ入力に setInterval("measure()",1000); } function measure(){ $("TEMP").innerHTML=analogRead(TEMP)+"<small>℃</small>"; $("HUMI").innerHTML=analogRead(HUMI)+"<small>%RH</small>"; $("CO2").innerHTML=analogRead(CO2)+"<small>ppm</small>"; } </script> <!-- ここまで --> </body></html>

5.1.3 温度・湿度・CO2濃度データのグラフ表示とデータの保存

 USB接続したセンサで温度・湿度・CO2濃度を測定し、正1分または正10分にデータをブラウザのWebStorageに蓄積するとともにグラフ表示を更新します。Webサーバを利用している場合はデータがサーバに送られ、他のパソコンからもデータを閲覧できます。

 なお、パソコンの時刻が測定時刻になるので、パソコンのNTP時刻同期を正しく設定しておくことが重要です。


5.2 室内マルチポイントセンサ



5.3. ポータブル熱中症指数計


(技術情報)

(参考資料)

[1] SHT31データシート, sensirion
[2] 日常生活における熱中症予防指針 Ver.1-2, 日本生気象学会, 2008, 2012.
[3] 日常生活における熱中症予防指針 Ver.3, 日本生気象学会, 2013.
[4] 熱中症予防ガイドブック, p.16, 日本体育協会, 2019.
[5] 堀江祐圭, 藤原弘章, 札幌管区気象台における黒球温度の観測報告およびWBGT値の各種推定式の特性について.
[6] ヒートアイランド現象に対する適応策及び震災後におけるヒートアイランド対策検討調査業務報告書, 環境情報科学センター, 2013.
1.3 適応策の評価指標の検討
参考資料1-7 適応策の温熱指標に関するヒアリング結果
参考資料1-10 温熱指標に関する留意事項の整理
[7] G.M.Budd, Web-bulb globe temperature(WBGT) -- its history and its limitations, JSMS, no.11, pp.20-32, 2008.
[8] B.Lemke and T.Kjellstorm, Calculating Workplace WBGT from Meteorological Data: A Tool for Climate Change Assessment, Industrial Health, no.50, pp.267-278, 2012.
[9] 青森県の暑さ指数予報, NHK.
[10] 小山智史, 佐藤ゆかり, 森菜穂子, リアルタイム熱中症指数(WBGT)モニタリングシステムの開発, 第 31回日本産業技術教育学会東北支部大会講演論文集, pp.15-16, 2013.
[11] 今井直子, 前田洋子, 森菜穂子, 淋代香織, 重症度判断に役立つ「熱中症チェックシート」とどこでもチェックできる「モニタリングシステム」, 健, Vol.43, No.4, pp.23-26, 2014.

この取り組みの一部は、2013年度弘前大学教育学部附属学校共同研究奨励費および2013年度弘前大学総合情報処理センター研究開発費の補助を受けて行いました。


koyama88@cameo.plala.or.jp