盲ろうの方のコミュニケーション手段として点字や指点字や指文字が用いられます[1]。情報機器が利用できるようになれば、遠隔でのコミュニケーションや情報の入手に大きな進展が期待されることからさまざなま検討が行われています。振動によるモールス符号の表現もそのひとつです[2][3]。
ここでは、スマートフォンのバイブレーション機能を使ったモールスコミュニケーションツールを検討してみました。スマートフォンアプリとして開発されたMIO[3]を参考に、Web Vibration API([4]を用いて、Webアプリとして作りました。
動作の確認はスマートフォン(Android)のchromeブラウザで行っています(ブラウザの対応状況は[4])。
スマートフォンのバイブレーション機能がブラウザから利用できるかどうかは、下記で確認できます。
作成したアプリは表1のようなものです。
| 項目 | 適用 |
|---|---|
| 対応Webブラウザ | WebVibrationAPIを利用できるブラウザ(Can I useで確認できる) 動作の確認はスマートフォン(Android)のChromeブラウザで行った |
| Webアプリ | morsevib.html, wordlist.js |
| モールス符号 | 付録1に記載 |
| 表示の速さ | dotの時間を100~300msで調整(毎分18~50文字に相当) |
このページ冒頭のボタンを押すと、モールスバイブレーションアプリが起動します(図2)。

入力欄に文字を入力し(図では「HELLO」)、ボタンを押すと、モールスバイブレーションが始まり、利用者はこの振動を読み取ります。ブラウザ画面にもモールス符号が表示されます(図3)。文字表示部分(図では「HELLO」の部分)にタッチしてもボタンと同じ操作になります。

速さ(dotの長さ 0.1~0.3秒)はスライダーで調整できます。途中で停止する場合はを押します。
012..., ABC..., abc..., アイウ..., あいう...などの文字に対応しています(付録1)。
入力欄にモールス符号で入力することもできます。
図3の画面下の ・ の部分にタッチするとdotの入力、 - の部分にタッチするとdashの入力、 □ の部分にタッチすると符号の終了で、1文字が確定します。操作時にはバイブレーションがあるので、確認できます。
練習用、あるいは評価用に、単語1語のランダム表示の機能を設けました。登録されているのは「あいさつ」「えき」「きいろ」など2~4文字からなる1942語です。「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」の拗音はそれぞれ「つ」「や」「ゆ」「よ」となります。また、かなとカタカナは区別されません。
ボタンを押すと、入力欄にランダムに1語が表示され、バイブレーションが開始します。ボタンを押すと、連続して10語が提示されます。
「あ」および「か」の振動のタイミングは図4のようになります。dot(短点)の長さTを200msにした時、「あ」は3.6秒、「か」は2秒、「あ」~「ん」の単純な平均は2.4秒となります。毎分25文字です。
「あ」のモールスバイブレーション | 「か」のモールスバイブレーション | |
| 図4. モールスバイブレーションのタイミング(Tはdotの時間) | ||
他の方式と比較したものが表1です。比較といっても実際に実験したわけではなく、計算値や文献に紹介されている値を並べてみただけなので、目安にすぎません。
| 方式 | 読み取り速度 | 備考 |
|---|---|---|
| 指文字装置 | 毎分60文字 | 保持時間を1秒とした時 |
| モールスバイブレーション | 毎分25文字 | dotを 200ms とした時の「あ」~「ん」の単純平均 (モールス通信は毎分50~150文字程度) |
| 点字バイブレーション | 毎分18文字 | dotを 200ms とした時 |
| 点字 | 毎分100~300文字 |
[1] 河村(編): 盲ろう者と触手話, 国立リハビリテーションセンター, 2005
[2] 河野他: 振動による文字情報伝達の有用性に関する研究, 川崎医療福祉学会誌 vol.19, 2009.
[3] D.C.Kutner, S.Hadzidedic: Vibration-based communication for deafblind people, IEEE Haptics Symposium, 2022.
[4] Vibration API, https://developer.mozilla.org/en-US/docs/Web/API/Vibration_API