6年生の3学期の社会科は、政治や世界の国々の勉強である。
「弘前市に裁判所はあると思いますか?」
社会科の時間に先生に聞かれて、何人かの人が手をあげた。ジュンちゃんも勢いよく手をあげた。前に明治天皇御巡幸の史跡を訪ねたことがあったが、その時、石碑が弘前裁判所の前に建っているのを見たからである。
弘前裁判所は元長町にある。近くには青森銀行記念館や陸奥新報社、追手門広場などがある。弘前公園の堀ぞいに進むと弘前市役所もある。このあたりは弘前市の政治の中心地である。
「弘前市の裁判所はどの種類になっているのかな?」
教科書の十三ページを見ながらみんなで考えてみた。
「地方裁判所かな、それとも家庭裁判所や 簡易裁判所かな」
「電話をかけて聞いてみよう」トモちゃんが言い出した。ついでに、見学が出来ないか聞いてみることになった。
卒業式の練習も始まって学校が午前授業になったある日。
ジュンちゃんたちはお母さんと一緒に弘前裁判所を訪ねてみた。
庶務課の人に電話で見学のことをお願いしておいたので、裁判所の中をいろいろ見学することができた。
「裁判中の部屋もあります。裁判を自由にみてもよいと決められていますが、うるさくすると部屋から出されます。」
係の方の注意を守って、いつも元気なトモちゃんも今日はおとなしい。実際にジュンちゃんたちが見学した日にも刑事事件の裁判が行なわれていた。
おどろいたことに、一つの建物の中で地方・家庭・簡易の三つの裁判が行なわれているのである。現在四名の裁判官のもとで、刑事・民事合わせると何百件にもなる、争いごとや問題、事件が調停されたり裁判されたりしている。法廷は全部で四つあった。
テレビなどでよく見る大きな法廷で、裁判官も三人。この部屋に入れてもらったジュンちゃんたちがまず眼にしたものは、中央の一段高い所にある三つの裁判官席である。ここで弘前や津軽地方のことが裁判されると思うと、緊張してきた。
天井はとても高い。五メートルもあるだろうか。広さも教室の三倍ほどある。裁判官や検事、弁護人の席にはそれぞれマイクがセットされている。
傍聴席は五十あって前の列は記者席になっている。新聞にのるほどの大きな事件になると席が一杯になるそうだが、普段は少ない。
裁判官が一人で裁判する法廷である
丸テーブル式の法廷で話し合いで解決する場合に利用される。
「将来は裁判官や弁護士になってみようかな。」
また一つ夢がふくらむジュンちゃんであった。