マサちゃんの冬休みの探険テーマは「明治時代の建築物」だ。
「明治時代の建物は弘前市にいくつあるのかな?」
夕食を食べながら、つぶやくマサちゃん。
「それなら、交通広場にあるんじゃないの」
妹のなっちゃんは三年生だがなかなかしっかりしている。ゴーカードを乗りに行った時に、近くにある明治や大正時代の「ミニチュア都市」を見つけたらしい。
三学期には弘前市のうつりりかわりを勉強するので、昔の建物といっしょに写真もたくさん写したらしい。
「妹には負けられない。」
マサちゃんはお父さんの部屋にある津軽の洋風建築という本を読んでみた。
この本によると次のような建物がまだ残っているということだった。
「この一番はじめに出てくる青森銀行津軽支店というのは、もしかしたら百石町にある銀行のことかしら?」
お母さんがとなりからのぞいて首をかしげている。
「土手町から入った所じゃないか。」
と、お父さんも不思議そうな顔をしている。
給料日で銀行に用事のあるお母さんにくっついて、マサちゃんも出かけてみた。
銀行の前に案内の看板が立っている。
百石町の通りは自動車がたくさん走っていて少しはずかしかったが、一生懸命読んで、大事なことをメモしてみた。
正面から見ると本当に土蔵(どぞう)のように見える。
中に入ってみたマサちゃんはびっくりぎょうてん。
近代的な銀行になっていて、預金をしたりお金をおろしたりする人々でにぎわっている。パソコンなどいろいろな機械も使われている。土蔵のような建物からは想像もできない。
けやきの柱 黒檀紫檀(こくたん・したん)の床(とこ)の間 |
お母さんが預金をしている間にいろいろ観察してみるマサちゃん。明治時代を思わせる、外国風の丸い柱が4本、白い壁、古い時計などがある。建てられた頃の写真を見たり宮本甚兵衛の説明を書いた案内板を読んでみると、明治時代の雰囲気が伝わったきた。
二階には、弘前で一番はじめに黒檀や紫檀が使われた和室がある。銀行の人に特別に見せてもらったマサちゃんは大満足であった。